Generative AI アイデアキッチンで生まれたアイデアとプロンプト紹介
SCSKは、専用環境で生成AI「SCSK Generative AI」(以下 SCSK-GAI)を構築し、全グループ社員が業務での利用を開始しています。また、生成 AI を積極的に業務活用することを目的として、社内の業務効率化や生産性向上に寄与するアイデアを考えるイベント「Generative AI アイデアキッチン」を開催しています。2023年11月現在で、オンラインとオフラインを合わせて18回開催され、延べ3,000を超えるアイデアが寄せられました。この「Generative AI アイデアキッチン」を通じて集められた、生成AI活用のアイデアの一部を、生成AIへの入力(プロンプト)を含めて紹介いたします。
生成AIの活用アイデアとプロンプトのポイント
当社では業務内容を大きく6つのカテゴリに分類し、生成AIの活用アイデアを発想しました。これらを具体化することで業務品質向上、効率化、さらには革新的な価値創出を目指しています。
生成AIは人間の様々なニーズに対応することができます。しかし、その多様な機能と可能性を最大限に活かすためには、発想された活用アイデアを明確な用途カテゴリに分類することが不可欠です。当社は発想したアイデアを、用途別に以下3つのカテゴリに分類しました。
「効率化」: 業務プロセスを高速化し、時間を節約するための用途です。自動化等により作業の迅速化を実現し、より多くの業務を短時間で処理することが可能になります。
「ロールプレイ」: 業務の質を向上させるための用途です。 AIの文章解釈や分析能力を用いて、人的エラーを減少させ、業務の改善点を明らかにします。
「フィードバック」: 生成AIを用いて実践的な場面を再現し、対話や対応能力を向上させるトレーニングを行う用途です。対人のインタラクションに匹敵する経験を提供し、創造的スキルの発展を促します。
提案活動における想定質問の作成 [ロールプレイ]
お客様への提案時に、生成AIを仮想のお客様として活用し、想定される質問を生成させるアイデアです。従来は同僚が提案内容を確認し、フィードバックを行っていましたが、生成AIによる擬似質問を取り入れることで、より実践に近い形での提案練習が可能となり、結果として提案内容の質の向上が見られました。さらに、この方法は、同僚の業務負荷を軽減する副次的な効果ももたらしました。
プロンプトとしては、以下の点に留意して作成しています。
生成AIがどういう役割、立場にいるのかという設定[ロールの定義]
見出し(#)を用いた詳細部分の整理
前提情報を踏まえた資料の翻訳 [効率化]
このアイデアでは、秘匿すべき情報をマスキングし、前提となる情報を入力した上で、生成AIに英文契約書の翻訳を依頼します。従来、契約書などの資料を理解する際には、有償の翻訳サービスを使用していましたが、契約書の条文には含まれていない前提条件が翻訳されないため、契約書を正確に解釈するのに時間がかかっていました。しかし、生成AIを利用することにより、契約書であることや特に注意すべきポイントなどを指定できるため、条文の内容をより迅速かつ正確に理解することができるようになりました。
プロンプトとしては、以下の点に留意して作成しています。
前提条件の提示
確認したい点の提示
列挙型の記法を用いた条項の列挙
アンケート回答の分類と改善案の提案 [フィードバック]
このアイデアでは、社内研修の自由記入式アンケート回答を分類し、それを基に次なる施策案を練り上げます。これまでの方法では、すべての回答を人手で要約・集計し、主観に基づいて次の施策を検討していました。生成AIを用いることで、アンケート回答をまず分類し、それらから洗い出せる改善案を提示することが可能になります。これにより、主観だけではなく様々な視点が得られ、通常は見過ごされがちなユニークな意見にも考慮を払う機会が増えました。
プロンプトとしては、以下の点に留意して作成しています。
段階を踏む
アンケートから直接施策案を出すのではなく、アンケート→分類分け→施策案と順を追って一つずつ処理させて発散を防いでいます。個数の指定によって提案数を増やす
「提案してください」のみだと1個しか提案してくれないこともあるためです。
Excelマクロの仕様書作成におけるリバースエンジニアリング [効率化]
このアイデアは、Excelマクロの仕様書を生成AIに作成させるものです。業務の効率化のためにExcelマクロを作成していましたが、詳細が記されたドキュメントが残っていない場合は、リバースエンジニアリングを行い作成する必要がありました。従来、この作業は社員が業務の合間にソースコードを調査して行っていましたが、生成AIによって説明文が作成されるようになり、注意や補足事項も含む詳細なドキュメントが得られるようになりました。これにより、担当者の作業負担が軽減されました。
プロンプトとしては、以下の点に留意して作成しています。
出力のフォーマットを指定
「# 特記事項」を設けることで補足的な情報を得る
この場合は、引数の型についての注意点などが補足されました。
最後に
SCSKでは、「Generative AI アイデアキッチン」を開催することで、グループ内における生成AIへの多様な意見やアイデアを集め、その利用方法を活用集として蓄積しています。蓄積されたアイデアは用途以外にも業務ごとにも分類することで、良いプロンプトがグループ内に広く流通するようにしております。
今後は「Generative AIアイデアキッチン」で培われたアイデア創出のノウハウやフレームワークをお客様にも提供し、広く展開することで、お客様自身の生成AI活用を支援することを目指しています。