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ナレッジグラフ~作成方法とビジネスへの応用~

瀬在 恭介 Kyousuke Sezai
SCSK株式会社
R&Dセンター 技術開発部
2016年、SCSK株式会社に入社。金融業界にてシステム開発全般の業務に従事。 2019年から研究開発部門にてAI研究チームリーダーを務め、自然言語処理AIや知識グラフに関する技術開発、論文寄稿、知財取得、事業支援に従事。

本稿では、アメリカを中心に研究や応用が注目を集めている「ナレッジグラフ(知識グラフ)」という技術についてご紹介します。


ナレッジグラフとは

ナレッジグラフとは、有効グラフの一種で「エンティティ」と「エンティティ」の「関係」をグラフ化したものです。ここでいうエンティティは、「携帯電話」や「動物」や「2021年」といった世の中に存在するモノや概念、事柄を意味します。例えば、以下は「太郎」という人物に関するナレッジグラフのイメージです。

上記から「太郎」は「1999年生まれ」で「花子」と友人で「モナ・リザ」に興味のあることがわかります。また、「モナ・リザ」についての関係も可視化されており、更に「太郎」は「人」であるといった概念との関係までわかります。
こういった本来人間が持ちあわせている「常識」や「暗黙知」をシステム上で表現することを目的とした技術がナレッジグラフです。

ナレッジグラフのビジネス応用

ナレッジグラフはその特性から、サイロ化された知見の共有、膨大な知識に対する検索、人間では見つける事の難しい洞察の獲得などを目的に様々なビジネスにも応用されており、以下のような事例があります。

  • システム情報からバグ発生時の影響調査

  • AIと組み合わせて、個人の好みに特化した関連動画のレコメンド

  • 最適経路検索

  • 社内ナレッジの見える化

Google検索結果で右側に表示される関連情報にもナレッジグラフが使われています。

上記のように、ナレッジグラフは多岐にわたる分野での応用が進む技術と考えられています。

ナレッジグラフの作成方法

ここでは、どのようにナレッジグラフを作成するかを簡単に解説します。

前提として、ナレッジグラフの表現に用いられる「RDF(Resource Description Framework)」形式では、主語、述語、目的語の3つの要素の関係を表現したものを「トリプル(triple)」と呼び、複数のトリプルを定義することでナレッジグラフを表現することが可能です。

最もシンプルな記載方法は以下のように、<>内に主語、述語、目的語を記載し、各トリプルの後に「.」を置きます。

<太郎> <友人> <花子> .
<太郎> <興味がある> <モナ・リザ> .
<太郎> <生まれ年> <1999> .
<モナ・リザ> <描かれる> <ダ・ヴィンチ> .

上記RDFをグラフ化すると、以下の図のようなナレッジグラフが作成されます。

ナレッジグラフには、各エンティティをWeb上のURI(Uniform Resource Identifier)に紐づけてエンティティの意味を統一化する手法があります。上の図においては、「http~」で始まる表現はどのURIも指定されていない為、サンプルのURIを参照しています。

最後に

今回はナレッジグラフについて紹介しました。
今後、よりデータの管理・応用が重要視されていく中で、ナレッジグラフはビジネスを手助けする技術になることが期待されています。


■ナレッジグラフ技術解説
1)ナレッジグラフ~ナレッジグラフの作成方法とビジネスへの応用~
2)ナレッジグラフにアクセスする言語「SPARQL」とその使用例を解説
3)ナレッジグラフのRDFデータベースとSPARQLでの検索方法を解説