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講演「生成AIの現場利用は新たな段階へ!自律型AIエージェントによる未来型業務パートナー開発の取り組み」~EdgeTech+ 2024~

2024年11月20日(水)~11月22日(金) の3日間にわたり「EdgeTech+ 2024」が開催されました。本イベントにSCSK技術戦略本部 デジタル推進部の大塚と加茂が登壇し、昨今大きな注目を集めているAIエージェントについて講演しました。
本記事では、当日の講演内容から抜粋してAIエージェントの概要やSCSKの取り組みの一部をご紹介いたします。


イベント概要

EdgeTech+は「事業変革を推進するための最新技術とつながる総合展」です。AI・IoT・クラウド・組み込み技術など、多様なテーマをカバーしており「EdgeTech+ 2024」では延べ約3万人が来場しました。

EdgeTech+ 2024
https://www.jasa.or.jp/expo/

登壇者紹介

大塚 高廣 Takahiro Otsuka
SCSK株式会社
技術戦略本部 デジタル推進部 開発第一課 課長

総合電機メーカーにて衛星・ロケット向け通信システムの開発、自動車メーカーにて車体制御システムやインフォテイメントシステムの開発に携わった後、2021年にSCSK入社。
現在はマネージャー兼リードエンジニアとして従事。現職ではこれまでFPGAによる量子AIシミュレータの研究開発を担当し、現在は生成AIを活用したAIエージェントの研究開発、およびAI技術による自社事業高度化に従事。最先端技術の研究開発と社会実装を推進している。

加茂 司 Tsukasa Kamo
SCSK株式会社
技術戦略本部 デジタル推進部 開発第一課

2023年以来、車載システム開発の高効率化を目指し、RAG(Retrieval Augmented Generation)技術を活用したチャットボットの開発に従事。
現在は、より現場のニーズに即したシステム構築を目指し、RAG技術を応用したAIエージェントの研究開発、ドキュメント生成機能およびレビュー機能の開発に取り組んでいる。将来的には、これらの技術を応用し、より高度な車載システム開発支援ツールの開発を目指している。

講演「生成AIの現場利用は新たな段階へ!自律型AIエージェントによる未来型業務パートナー開発の取り組み」

AIエージェントの概要

AIエージェントとは、人が設定した目標を達成するために必要なタスクを自律的に生成し、計画的に実行するAIシステムです。ユーザが最終目標を提示するだけで、AIエージェントが「目的達成に必要なタスクの洗い出しと実行計画策定」と「計画に基づいたタスクの順次実行とエラー時の再試行」を自動で遂行することができます。

従来のチャットボット型の生成AIは単にユーザとの対話に応じるものですが、AIエージェントはあたかも数名の専門家やスタッフが協力してタスクを効率よく進めるように動作します。このため、AIエージェントは複雑なタスクの実現を助ける新たな労働力として期待されています。

SCSKのAIエージェントの取り組み

「2025年度はAIエージェントの時代」と言われており、SCSKでも積極的にAIエージェントに取り組んでいます。
SCSKは、2024年9月30日のプレスリリースの通り、複数のAIエージェントが協調して業務を遂行する「SCSK-Multi AI Agent Office」構想を策定しました。この構想は、開発からデータ分析、オフィスワーカーに関わる業務すべてをAIエージェント自らが遂行するものです。この構想を実現するにあたり、まずは特定の業務に特化したAIエージェントの実証実験を開始しています。

AIエージェント事例:モビリティ領域の開発エージェント

AIエージェントを、モビリティ領域の開発業務に適用した事例をご紹介します。

開発組織では、設計書や過去のインシデント情報、ベテランの知識など、さまざまな情報が散らばっています。情報が適切に管理されていないと、コミュニケーションに無駄な時間がかかることや、作業の手戻りが発生してしまいます。これにより開発効率の低下や意思決定の速度を阻害する可能性があります。

そこで当社では、社内の情報を効率的に活用できるAIエージェントとして、「QINeS-GAI(※1)」を概念実証中です。

※1 QINeS-GAI:「QINeS」は当社モビリティ事業グループの提供する「車載システムの標準規格であるAUTOSAR準拠の国産Basic Software(ECUのOS、ドライバ、ミドルウェアにあたる部分)を中心としたワンストップサービス」であり、「QINeS-GAI」はSCSKが現在進めているモビリティソフトウェア開発革新を実現するためのプロジェクトの総称です。

ここでは「QINeS-GAI」のメイン機能と、それを支える要素技術をご紹介します。 

■インテリジェントコレクション機能 
ユーザの意図を理解し、文脈を把握して必要な情報を自動収集する機能です。エージェントがユーザの要求に応じて動的に配置されることで、情報検索の効率化を図ることが可能となります。

■インテリジェントDR(デザインレビュー)機能
配置されたエージェントより、開発において重要性の高い設計書のレビューを行う機能です。
インテリジェントDRでは、インシデントの過去事例やレビュー結果をコレクションとしてまとめ、レビュー専用のスーパーバイザエージェントを配置します。スーパーバイザはまず計画を立て、複数のサブタスクに分割します。そして、各サブタスクを別のAIエージェントに依頼し、その結果をスーパーバイザが確認し最終的なレビュー結果を出力します。
このプロセスによって、レビューにかかる工数の削減やチェック漏れの防止といった効果が期待できます。

■レポート作成機能
ユーザがチャットで情報を追加することで、インタラクティブにレポートの文言や図表を修正できる機能です。これを実現するため、レポート生成エージェントと別に図表生成エージェントを連携させています。

■回答精度向上を図るためのGraph RAG
Graph RAGとは、ハルシネーションを減らし精度向上を図る技術です。テキストを要素間の結びつきを明示するグラフ形式にしてからLLMに入力します。ドキュメント情報をグラフ形式に変換し他ドキュメントとマッピングすることで、設定値等の誤りを検出できます。

■複雑なタスクを遂行可能とするエージェントアーキテクチャ
エージェントアーキテクチャとはエージェントの構造と設計を指し、計画立案を含む一連のプロセスや、他のエージェントや環境との相互作用を含みます。
「QINeS-GAI」におけるエージェントアーキテクチャでは、計画立案や指示を出す際にいくつかの工夫を行っています。計画立案においては、エージェントが自身の能力を認識し、計画立案に制約を設けることで、安定した挙動を確保しています。また、指示を出す際の工夫として、メタプロンプティングがあります。生成AIを扱う際にはプロンプトエンジニアリングが重要ですが、このプロセスをエージェントが代行することで、効率化を図っています。

今後の展開

現在、当社のシステム開発やデータ活用プラットフォーム運用業務など、特定領域における概念実証を進め、複数の自律型AIエージェントを連携させた「SCSK-Multi AI Agent Office」構想の具現化を進めています。将来的には、バックオフィス業務やシステム開発・運用業務など、多岐にわたるタスクを自律型 AIエージェントが協調して遂行する未来を目指します。


先進デジタル技術の最大活用による事業構造の変革や生成AI活用による飛躍的な生産性向上の実現を目指す、SCSK技術戦略「技術ビジョン2030」を公開しました。詳細は、下記リンクからご覧いただけます。
https://www.scsk.jp/sp/technology_strategy/index.html

また、SCSKでは共に活躍していただける高度デジタル人材を募集しています。詳細は各採用サイトをご覧ください。

新卒採用サイト
https://www.scsk.jp/recruit/saiyo/

キャリア採用サイト
https://www.scsk.jp/recruit/career/